父の言葉。
母が旅立ちしばらくしてから、一緒に住んでいた。
とてもとても狭いわが家。父に悪いかなと思ったけれど、楽しそうに暮らしていた。私たち家族も、毎日がよりにぎやかになり喜んでいた。
そのころの私は、時間帯が不規則な仕事をしていた。終電で帰る日があれば、始発で出発する日もあったり。
私がいないときのみんなのご飯、がんばって毎日作ってから出かけていた。
始発で出かけるような日は、深夜に料理。私は圧力鍋をよく使うので、家の中にカタカタとおもりが振れる音がする。完成に近づくといいにおいも家中に広がる。
狭いわが家、父は私が料理をしていることにたびたび気づき起きてきた。起こしてしまった。
そしていつもこう言った。
「おいしそうな音がするね」
おいしそうないいにおい、ではなく、おいしそうな音。
なんとなく、この表現、好き。
この言葉がうれしくて、深夜に料理することを一度もツラいと思わなかった。
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