思いこみ~父の引っ越し

ことば

母は、突然旅立った。前日の午前中まで元気だった。お昼過ぎに急に具合が悪くなった。かかりつけ医の先生に検査の結果待ち、しばらく様子見と言われたが、突然の旅立ちとなった。

父がひとりになった。ひとり暮らしになった。

両親と私は、とても近くに住んでいた。
そして、両親は私の家族と仲よくしていた。母の旅立ち後は、毎日わが家でお昼ご飯も夕飯も一緒に食べていた。

今後について、父と私の家族と兄弟と相談し、父が私たちの家に引っ越してくることになった。
いや、相談というより、みんなの総意、即決だった。

問題点はひとつ。わが家は、とてもとても狭い。いままで以上の人口密度、どうなるか。

ま、なんとかなるさ。

母の突然の旅立ち、みんな少しでも前向きに歩き出さなければと無意識に思っていた。両親の家の荷物はとても多かった。このときは、かなりの荷物を父が選別。わが家にもってくる荷物は必要最低限に、その他の荷物はトランクルームを借りてそこに置くことにした。

お引っ越しを決めてから半年ほど、無事に父のわが家での暮らしが始まった。

人口密度問題、気にならなかった。それより毎日ワイワイにぎやかで楽しかった。

知人友人に母の旅立ちを報告、父は引っ越したと話をする。

「お父さまと、遠くなってさびしいですね」

いやいや、近くなりました。

両親とわが家のが近かったコト、わが家の狭さを知っているからこその思いこみ。
まさか、わが家に父が引っ越しするとはおもいつかなかったって。

父との楽しいにぎやかな日々は二年弱。父の旅立ちにより、もとのカタチに戻ってしまった。

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