どうしてこうなったのか、話を聞いてビックリしすぎて細かいことはわすれちゃった。
ある日の夕方近くに住む母から電話がきた。「帰ったらちょっと寄って。驚かないでね」
声は明るかったがきっとよろしくないなにかがおきたのかなと、覚悟を決めて実家をたずねた。いつもならまだ帰ってこない父がいた。眉間に大きなばんそうこう。目はうっすら腫れている。
仕事中にタクシーに乗った。忙しくてバタバタしていた。タクシーを降りるときに両手に持った大きな荷物が引っかかり足が出ず、顔から転んだとのこと。
運転手さんが救急車をよんでくださり、緊急手術。何針だったかぬった。痛々しいばんそうこう、血がたくさんついた服。病院からタクシーで帰ってきたとのこと。
元気そうだったので「人生七十九年生きていたら一度くらい転ぶよね」と声をかけた。
病院に一度も行ったことのない父。
「薬を飲んでと言われたけれどもらえなかった」
「数万円かかった」
「母がうるさいから今日はかなり薄めてお酒を飲んでいるから」
母は
「だいぶ薄めたから大丈夫だよね」
病院で渡されたという紙を見たら、手術当日は入浴禁止禁酒、薬を飲んでゆっくりするようにと指示が。頭をうっていることになるので家族は要観察と。
ちょっとちょっと、薄めたからってお酒はダメじゃん。ま、もう飲んでいるし今グラスにある分だけにして。薬は?薬
父は病院に行ったことがなかったので、お会計のときに処方箋を渡されたがそれを他の領収書や注意書きの紙と一緒に家で読もうと持ってかえってきたのだ。
もちろん、保険証を持ち歩いているわけがない。全額自己負担の金額を払ってきた。
もろもろ説明したら理解できたようだ。
薬はまさか別のトコロに行くとは思わず、お会計のときにもらわなかったから出されていることさえ気づいていなかったらしい。
全額自己負担をした方向けの案内も入っていた。何日以内だったか、保険証を病院のお会計窓口に持っていくと差額を返還していただけるという内容。父はわざわざ時間をかけて交通費払っていくほどじゃないと言った。私が差額でどれくらい戻るか説明したら驚いていた。
翌日病院へ、保険証を持ち差額を受け取り薬をもらってきたのは私。
その後順調に回復して、数ヶ月後には傷もすっかりキレイになっていた。当日飲んだアルコールの影響も、なにもなかった。薬を飲まなくても問題なかった。
結果オーライ…。
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