私が幼稚園に入る前くらいのころ。平日は母と二人で家にいる。家遊びのときは、絵やひらがなをよく書いていた。
ある日母に「書けたよ!」と紙をみせた。私の名前を漢字で書いた紙。漢字は初めて。特に教えてもらったわけではない。リンゴをみてリンゴの絵をかく感覚。何かに書かれた私の漢字の名前を見ながら書いた。
母はいつものキラキラした笑顔で「スゴいね!上手だよ」と言ってくれた。
うれしくなり、その後も練習した。「書けたよ!」とまたまたみせた。母と兄弟の名前。
母、「よく書けたね。お父さんの名前も書けるかな」「むずかしい字が入っているから書けない」「いや、大丈夫。がんばって!こうやって、こうやって…」
どうにも「しんにょう」が理解できず書けなかった。
母のスイッチが入ってしまった。急に真剣な表情になった母。口調はやさしいけれど、どのくらい書いたか。なんと、父の名前も漢字で書けるようになった。
帰ってきた父はとてもとてもうれしそう。よかった、よかった。
母、家族みんな平等にという気持ちが強かった。いつも心の奥にあった。
なので、このような遊びのときも、同じ日に家族全員の名前が漢字で書けたということに幸せを感じていたのかな。
ステキな考え方だね、とだいぶたってから実感した私。
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