戦地から帰還した二男伯父は、自暴自棄だったらしい。私が想像しても、当然だ。自分の命がいつどうなるかわからない環境。毎日のように目の前で仲間が命を落とす。残酷な方法で命を絶たれる。
帰還されてしばらくしたある日、なにかの荷物を運んできた運転手さんに、お年頃のムスメがいる、と言われ、二男伯父は勢いで結婚されたらしい。
二男伯父が九州方面から引き上げご両親との同居を選んだのは、奥さまの子育てをみて違う、とんでもない、大変だ、ご両親に育てもらおう、と、思ったからとのこと。
古いアルバムを見たことがあるけど確かに、二男伯父のお子さま方の小さいころ、なんとなく、違和感があった。長男伯父のお子さまの小さいころや、私たちの小さいころとは、空気感が全く違った。
調べてみた。
奥さまの旧姓、やはり、戦いに関わるお名前。元々のお住まい、元々は海。もうこれだけで、納得してしまった。また、商人が多い町でもあったらしい。
二男伯父の奥さまを悪く言うつもりは少しもない。商業の町、行き交う人々と勢いある会話が飛びかい活気のあふれた環境だったのではないか。その真逆に近い環境へ。たとえばお客様にお茶をお出しするときのテンポや所作の空気感は、結婚前と後では全く違ったのではないかと思う。
逆の立場なら、学者肌の方が威勢よくモノを売るのは難しいかと思う。
奥さまも時代が違えば、違う環境でご自身がイキイキできる毎日を手にしたかもしれない。
従姉妹嫁は、時代に翻弄された二男伯父と、表現されていた。
そして父は小さかったので、二男伯父の結婚のいきさつや、九州方面から引き上げご両親と同居された本当の理由を最期までしらなかったようだ。
つづく
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